裏切られて、虜になった。
第一印象が180度ひっくり返ったデザインの魔法
これ、なんだと思いますか?
ベンチです。
みなさんの印象はどうでしょうか?
最初の印象は、正直、お世辞にも快適そうとは言えなかった。
金属の塊。
座り心地が悪そう。
硬そう。
無機質。
彫刻としての美しさはあっても、
家具として人が座るイメージが、最初はまったく湧かなかった。
でも、その印象は、
このベンチが生まれた背景(ストーリー)を聞いた瞬間に
ガラリと変わり始める。
リセ・ヴェスターが、叔母が最後の日々を送っていたホスピスを訪れた時。
彼女は、人が過ごす環境の大切さを痛烈に感じ、
「ホスピスの患者のためのデザイン」をテーマに作品を手がけていく。
デザインは、人間の感覚や心理にどのように働きかけるのか。
彼女は、認知行動療法や神経美学など、
専門的な分野をリファレンスしながら、独自のデザインを極めていく。
その最新作が、この「Dream View Bench(ドリーム・ビュー・ベンチ)」だった。
リセはこのベンチを作るとき、
「砂浜に自らの身体を沈めて、何度も何度も計測した」という。
その背景にある、人間への深い眼差しと、
執念とも言える制作過程を知り、
私は一気にこのベンチに惹きつけられた。
そして、実際に座って、その感覚を味わってみた。
「硬いだろう」と身構えていた身体は、
良い意味で、完全に裏切られることになる。
硬質な金属のはずなのに、
まるで自分の身体のラインを知っていたかのように、
吸い付くようにフィットする。
どこにも無理な力がかからず、体重が自然に消えていく感覚。
さらに驚いたのは、
座った瞬間に、視線が自然と上を向くことだった。
背もたれに身を預けると、首や頭の角度がごく自然に誘導され、
意識せずとも目線が空を見上げるように設計されている。
それは、常にスイッチを入れた状態で進み続ける
自動操縦のように過ごしている現代人が空を見上げることで、
意識を日常から解放する効果を狙ったものだという。
ショールームの窓際から、5月の鮮やかな空が見えた。
屋内にいるのに、なぜか心地よい公園でくつろいでいる気分になり、隣の人と会話が弾んでしまう。
物語と体験が、第一印象を見事にひっくり返し、
いつの間にか虜にさせてしまう。そんな、貴重な体験をした。
この作品はシンプルな造形のようで、現代の科学とテクノロジーの確かな裏打ちがある。
デザインは、人間の感覚や心理にどのように働きかけるのか。
その美しい問いの答えを導き出すために、
私も、科学的な知識を日々勉強したいと思った。



わーい🙌 つたない文章にお付き合いくださって、ありがたいかぎりです!
単なるデザイン紹介ではなく、「人を理解しようとする執念」まで伝わります。
YUIさんは良いデザインに出会うと、批評家ではなく探究者になるんだなと感じました🐾